広告の数字は改善したのに、会社の利益が減った話

リスティング広告の運用会社のホームページを見ると、「CPA改善」「ROAS向上」「CVR改善」といった言葉が並んでいます。

もちろん、これらの指標は広告運用において重要です。

しかし、経営者の立場から考えた場合、本当に重要なのはそこなのでしょうか。

私は違うと思っています。

広告出稿する目的は、CPAを改善することでも、ROASを向上させることでもありません。

1円でも多くの利益を会社に残すことです。

例えば、広告費100万円を使って利益500万円を生み出す運用と、広告費50万円を使って利益400万円を生み出す運用があったとします。

ROASだけを見ると後者のほうが優秀に見えるかもしれません。

しかし、経営者の立場で考えれば、利益が100万円多く残る前者のほうが価値のある運用です。

広告運用者はCPAやROASといった指標を日常的に見ているため、どうしてもそれらの改善に意識が向きがちです。

しかし、経営者が本当に見なければならないのは、広告管理画面の数字ではありません。

会社の売上と利益です。

私自身が犯した失敗

これは少し恥ずかしい話ですが、私自身も過去に同じ失敗をしたことがあります。

前職のFaber Companyに入社して間もない頃、あるクライアントの広告運用を引き継ぎました。

当時の私は広告費の無駄を徹底的に削ることが良い運用だと考えていました。

そこで、

・除外キーワードの追加
・成果の出ていない時間帯の配信停止
・無駄クリックの削減

などを徹底的に実施しました。

その結果、ROASは8.8から13へと大幅に改善しました。

数字だけを見ると大成功ですが、実際にはそうではありませんでした。

前任者の広告費は平均77万円。

私の運用では43万円まで削減されました。

確かに34万円の広告費を削減することには成功しましたが、その一方で月間の粗利は600万円から510万円まで減少していたのです。

つまり、

「34万円の広告費を節約した代わりに、90万円の粗利を失った」

ということになり、この運用方針は間違っていました。

数字は改善したのに、経営は悪化することがある

広告運用会社の事例ページを見ると、

「CPAを50%改善しました」
「ROASを200%改善しました」

といった実績をよく見かけます。

しかし、その数字だけでは本当に良い運用だったかどうかは分かりません。

なぜなら、CPAやROASは広告管理画面上の数字であり、会社の利益そのものではないからです。

本当のところ、CPAはある程度操作できるのです。

例えば、これまで「1件の成約」をコンバージョンとして計測していた会社が、「問い合わせフォーム到達」をコンバージョンとして計測するようにハードルを下げたとします。

すると当たり前ですが、コンバージョン数は一気に増えますし、CPAも劇的に改善するでしょう。

しかし、それによって会社の利益が増えたのでしょうか。おそらく増えていないでしょう。

これは極端な例ですが、広告管理画面の数字だけを見ていると、このような本末転倒な判断が起こり得ます。

CPAやROASは確かに重要な指標です。

しかし、それはあくまで途中経過を確認するためのものに過ぎません。

広告運用の目的はCPA改善でも、ROAS改善でもなく、会社の利益を増やすことです。

そのため、CPA改善にも2種類あります。

1つは広告費を削ってCPAを下げる方法。

もう1つは成約数を増やしてCPAを下げる方法です。

例えば、広告費が100万円で10件の成約ならCPAは10万円です。

ここで広告費を50万円に削減し、成約数が6件になればCPAは約8.3万円になります。

CPAは改善していますが、成約数は減っています。

一方で、広告費100万円のまま成約数を20件に増やせばCPAは5万円になります。

こちらもCPAは改善していますが、売上や利益は大きく伸びているはずです。

同じCPA改善でも、経営に与えるインパクトはまったく違います。

私が利益まで確認する理由

私が広告運用をお引き受けする際、可能であれば売上や利益の数字まで共有していただくのはこのためです。

広告管理画面の数字だけを見ていても、本当に良い運用かどうかは判断できません。

  • 利益率の高い商品が売れているのか?
  • 利益率の低い案件ばかり増えていないか?
  • 広告費を増やしたほうが利益はもっと伸びるのではないか?

こうした判断は、売上や利益の数字を見なければできませんので、利益の数字まで共有いただけると幸いです。